引当と保留を反映した利用可能在庫の計算方法と運用ルール

利用可能在庫は、実在庫から受注引当、製造指図への部材引当、品質保留、受入検査待ち、不良・返品待ち、期限切れを除いた数です。計算例、仮引当と本引当、引当解除漏れと二重引当の起き方、状態ごとの更新者と時点、優先順位と例外時の決め方を解説します。

この記事でわかること

  • 実在庫から差し引く6つの区分と、二重に差し引かないための前提を置いた計算例
  • 仮引当と本引当の違いと、引当解除漏れ・二重引当が起きる仕組み
  • 在庫の状態ごとの更新者と時点、引当の優先順位と他拠点の在庫を例外で使うときの決め方

在庫表に数があるのに出荷も投入もできない場面

営業が在庫表の数を見て納期を回答したら、その在庫は来週の製造指図に引き当て済みだった。棚にある部材を投入しようとしたら、品質保留や受入検査待ちで使えなかった。在庫表の数と、今日出荷や投入に使える数が違うと、こうした行き違いが起きます。

複数の製品で共用する部品は、使う予定を先に確保しないと、別の製品へ払い出した後で不足に気付くおそれがあります。営業が受注に使える数と、製造が工程内で使える数は、対象範囲が違います。払い出した材料や予約済みの数量をどちらに含めるか、部門間で揃えましょう。

この記事では、実在庫から、使い道が決まった在庫と使ってはいけない在庫を除いた、今日の時点で出荷や投入に使える数を利用可能在庫と呼びます。社内やシステムでは有効在庫や引当可能在庫と呼ぶこともあり、入出庫の予定を加えた見込みの数と混ざりやすい呼び方です。

画面の数が何を差し引いているかを確かめ、計算式と、状態を誰がいつ更新するかを決めることを勧めます。

引当の解除漏れと二重引当が起きる仕組み

引当には段階があります。仮引当は、見積や受注確定の前に在庫を仮に押さえ、成約しなければ解除する扱いです。本引当は、受注確定後に正式に確保し、他の注文へ回さない扱いとします。製造業では、製造指図を出した時点で部材を確保する引当もこれに加わります。

計算式が正しくても、状態の記録が遅れる、戻されない、二重に付けられると数はずれます。典型的な起き方は次のとおりです。

  • 残数を確認してから引当を記録するまでの間に、別の担当者が同じ残数を見て引き当てる。情報処理推進機構(IPA)の技術資料も、並行して処理する注文の間で、足りないのに引当可と応答しうると分析しています。[1]
  • 出荷や払い出しの後も引当を消さず、手持ちからさらに差し引いてしまう。出庫を記録するときに、対応する引当も解消します。
  • 受注の取消や数量変更、製造指図の変更・中止のときに、引当を戻す担当が決まっていない。
  • 仮引当に期限がなく、成約しなかった見積の分が在庫を押さえ続ける。
  • 期限切れと品質保留の両方で同じ現物を除き、二重に差し引く。除外理由が複数あっても、同じ現物を差し引くのは一度にします。

引当の付与と解除を別の部門が担うことが、解除漏れのきっかけになると考えます。受注の取消は営業が把握し、出荷は倉庫が行い、指図の変更は生産管理が決めるためです。

引当の解除・消し込みが漏れる場面と結果

受注・製造指図・見積で引き当てる在庫
  • 出荷・払い出しの後に引当を消さない出庫済みの分を手持ちから再び差し引く
  • 受注の取消・数量変更で引当を戻さない空いたはずの在庫が引当のまま残る
  • 製造指図の変更・中止で引当を戻さない他の指図や受注に使えない部材が残る
  • 期限のない仮引当が不成約のまま残る成約しなかった見積の分が在庫を押さえる
  • 引当の記録前に、別の担当が同じ残数で引き当てる二重引当になり、先の注文の現物が不足
解除や消し込みの漏れは利用可能在庫を少なく見せて受注を断る原因や不要な補充の発注を生み、引当の記録の遅れは二重引当で欠品を生みます。

6つの区分を差し引く計算式と計算例

利用可能在庫は、実在庫から受注引当、製造指図への部材引当、品質保留、受入検査待ち、不良・返品待ち、期限切れの6つを差し引いて求めます。差し引く前に、次の3つの前提を確かめてください。

  • 実在庫に入っていない状態は引かない。検査に合格するまで在庫に計上しない運用なら、受入検査待ちは差し引かない。
  • 1つの現物には1つの状態だけを付ける。期限切れで保留にもした在庫は、どちらか一方で差し引く。
  • 他拠点から移動中の在庫は、到着拠点で受入を記録するまで含めない。

計算例(数値は架空)

受入検査待ちを含めて数える運用で、実在庫が1,000個あるとします。受注引当100個、製造指図2件への部材引当450個、品質保留80個、受入検査待ち120個、不良・返品待ち30個、期限切れ20個を差し引くと、利用可能在庫は200個です。他拠点から移動中の150個を足して350個と回答すると、到着が遅れたときに欠品します。見積の仮引当が50個あるなら、200個と、仮引当も差し引いた150個を併記します。受入検査待ちの120個が合格し、品質保証が記録した時点で、利用可能在庫は320個になります。入出庫の予定を加えて先を見るときは、出庫予定にまだ引き当てていない分だけを入れます。引当済みの分はここで差し引いているためです。日別の推移の計算は別の記事で扱います。

表01.02-1利用可能在庫の計算例と、区分ごとの前提と外す人

区分計算例差し引くときの前提状態を外す人と時点
実在庫1,000個受入検査待ちを含めて数える運用―
受注引当−100個本引当の分。仮引当は別に示す倉庫が出荷時に消す。取消・変更は営業が戻す
製造指図への部材引当−450個製造指図2件分倉庫が払い出し時に消す。変更・中止は生産管理が戻す
品質保留−80個期限切れと同じ現物なら一方だけで引く品質保証が判定時に利用可能か不良へ移す
受入検査待ち−120個実在庫に含めない運用なら引かない品質保証が判定時に移す。合格の記録後は320個
不良・返品待ち−30個1つの現物に1つの状態だけを付ける返品は購買、廃棄や再検査は品質保証が処理
期限切れ−20個品質保留と重ねて引かない品質保証が判定し、廃棄や再検査を処理
利用可能在庫200個移動中の150個は含めない。仮引当50個があれば150個も併記―
1つの現物に1つの状態だけを付けて6つの区分を差し引くと利用可能在庫は200個で、移動中の150個は含めず、仮引当50個があれば150個も併記します(数値は架空)。

多く見ても少なく見ても起きる欠品と機会損失

利用可能在庫を多く見る方向のずれは、欠品と納期遅れにつながります。引当や保留の記録が遅れたり、移動中の在庫を含めたりすると、回答した納期に出荷できず、投入日に部材がそろいません。IPAの技術資料は、別の注文に引当済みの品を出荷すると、その注文の現物が不足することも挙げています。[1]

少なく見る方向のずれも損失になります。解除漏れや期限のない仮引当、判定が済んだのに戻さない保留が残ると、使える在庫があるのに受注を断ったり、補充の発注をかけたりします。仮引当を長く残すと新規受注へ回せる数が減り、仮引当を全くしなければ成約時に在庫が残っていないおそれがあります。

保留が長引いた在庫は、滞留在庫の入口にもなります。

他拠点の在庫を当てにする回答が増えると、輸送の費用と時間がかさみます。緊急の拠点間輸送が続く場合は、輸送実績だけでなく、引当時点と不足に気付いた時点を追って原因を確認します。食品では、取引先の納品期限によって出荷できない在庫もあり、別の条件で確かめる必要があります。

状態ごとの更新者と時点、優先順位を一覧にする

まず社内で使っている在庫の状態の呼び方を集め、出荷や投入に使ってよいかで区分し直します。そのうえで、状態ごとに付ける人と外す人、その時点を一覧にします。次は分担の一例です。

  • 仮引当は営業が見積時に期限付きで付け、成約で本引当に移し、不成約か期限で外す。
  • 受注引当は営業が受注確定時に付け、倉庫が出荷時に消す。取消や変更は営業が戻す。
  • 部材引当は生産管理が指図発行時に付け、倉庫が払い出し時に消す。指図の変更・中止は生産管理が戻す。
  • 受入検査待ちと品質保留は、品質保証が判定時に利用可能か不良へ移す。
  • 不良・返品待ちと期限切れは品質保証が判定し、返品は購買、廃棄や再検査は品質保証が処理する。
  • 移動中の在庫は、到着拠点が受入時に利用可能へ移す。

二重引当を防ぐため、引当の記録は1か所に集め、残数の確認と引当の記録を続けて行います。引当の優先順位は、受注順か納期順かという基本の順番、引当済みの分を別の受注や指図へ回すときの確認者、受注と製造指図が同じ在庫を取り合うときの調整者を決めます。

他拠点の在庫は原則として当てにせず、緊急の差し込み注文などで使うときは、営業責任者と出す側の拠点の責任者の承認、輸送費と到着日、出す側での欠品の有無を確かめて記録することを勧めます。例外の件数は定期的に数え、増えていれば在庫水準の見直しに回します。

引当と保留の更新ルールを決める実行チェックリスト

  • 社内で使っている在庫の状態の呼び方を集め、出荷・投入に使ってよいかで区分し直す。
  • 状態ごとに、付ける人と外す人、それぞれの時点を一覧にする。
  • 仮引当に期限を付け、成約で本引当へ移す人と、不成約・期限到来で外す人を決める。
  • 受注の取消・数量変更と、製造指図の変更・中止のときに引当を戻す担当を決める。
  • 引当の記録を1か所に集め、残数の確認と引当の記録を続けて行う手順にする。
  • 受注順か納期順かの基本の順番、引当済みの分を回すときの確認者、取り合いの調整者を決める。
  • 他拠点の在庫を例外で使うときの承認者と、輸送費・到着日・出す側の欠品の有無を記録する欄を決める。
  • 例外の件数を数える時期を決め、増えていれば在庫水準の見直しに回す。
計算式を決めるだけでなく、状態を付ける人と外す人、その時点を決めて初めて、利用可能在庫が画面と現場で揃います。

まとめ

利用可能在庫は、実在庫から6つの区分を差し引いた今日使える数です。計算式そのものより、引当や保留を誰がいつ付けて外すかが決まっていないことが、欠品や二重引当、使える在庫の見落としを生みます。実在庫に何が含まれるかを確かめ、1つの現物に1つの状態を付け、移動中の在庫は含めません。最初の行動は、自社の状態の区分と更新者、時点を一覧にすることです。

よくある質問

利用可能在庫と有効在庫は同じですか?

会社やシステムによって呼び方が違います。このシリーズでは、今日の時点で出荷や投入に使える数を利用可能在庫、入出庫の予定を日付順に加えた見込みの数を有効在庫と呼び分けています。画面の数が何を差し引いているかを確かめてください。

受入検査待ちの在庫は、利用可能在庫に含めますか?

含めません。品質保証が合格を記録した後に、利用可能へ移します。ただし、検査待ちの品を在庫に計上していない運用なら、差し引く必要はありません。二重に差し引かないよう、計上の時点を先に確かめます。

仮引当はいつ解除すればよいですか?

仮引当を付けるときに期限を決め、成約しなければ期限で外します。期限の長さについて一般的な基準は見つかっていないため、見積から受注までの実際の日数を見て社内で決め、期限を延ばせる人も決めておきます。

共有のExcelで引当を管理していれば、二重引当は起きませんか?

共有しているだけでは防げません。ある人が残数を見てから記録するまでの間に、別の人が同じ残数を見て引き当てることがあるためです。引当の記録を1か所に集め、確認と記録を続けて行う手順にします。

移動中の在庫や他拠点の在庫を引き当ててもよいですか?

移動中の在庫は、到着拠点で受入を記録するまで利用可能在庫に含めません。他拠点の在庫は原則として当てにせず、緊急時の例外として承認者と費用を確かめて使います。例外が増えてきたら、在庫水準そのものを見直します。

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