納品期限(3分の1ルール)と日付逆転を踏まえた出荷可能在庫の管理

賞味期限が残っていても、取引先の納品期限(3分の1ルール)や日付逆転で出荷できない在庫があります。納品期限と自社の出荷期限の計算、取引先別の出荷可能在庫の判定、条件一覧の作り方、期限が迫る在庫への対応の順序を解説します。

この記事でわかること

  • 3分の1ルールと日付逆転が、賞味期限内の在庫の出荷を止める仕組み
  • 納品期限日と自社の出荷期限日の計算と、取引先別の出荷可能在庫の判定方法
  • 取引先別の条件一覧に入れる項目と、期限が迫る在庫への対応の順序

賞味期限が残っていても取引先に出せない在庫

賞味期限まで何か月も残っている製品なのに、取引先に納品できない。出荷の現場では、こうした在庫が返品や値引き、廃棄の原因になることがあります。出荷できない理由は、取引先ごとの納品の条件にあります。

代表的な条件は2つあります。1つは3分の1ルールです。農林水産省は、賞味期間の3分の1以内で小売店舗に納品する慣例と説明し、期間内に納品できなかった商品は、賞味期限まで日数を残していても廃棄となる可能性があるとしています。[1]もう1つは日付逆転品の納品禁止です。

公正取引委員会の報告書は、日付逆転品を、小売に既に納品した商品より1日でも古い賞味期限(または製造年月日)の商品と定義しています。[2]日付後退と呼ばれることもあります。

同じ報告書のアンケートは、製造業者と卸売業者17,445社に送られ、4,706社が回答しました。3分の1ルールに不満(どちらかといえば不満を含む)と答えたのは、設問に答えた1,148社のうち818社(71.3%)です。日付逆転品の納品禁止では、1,154社のうち651社(56.4%)でした。[2]

どちらも回答した事業者の中の割合で、業界全体の割合ではありません。報告書の概要によると、この2つの商慣行は、ほかの商慣行よりも、それに従って取引する事業者の割合が高いものでした。どの商慣行も、契約書などの書面はないという回答の方が多かったとされます。[3]期限の種類の全体像は関連記事に譲り、ここでは出荷の可否に絞ります。

取引先ごとに違う2つの日付と、社内にない記録

出荷の可否は、ロットの賞味期限だけでなく、取引先ごとの納品期限と、納品先に前回納めた賞味期限で決まります。

平成20年の農林水産省の資料では、一般的な設定は、納入期限が賞味期間の3分の1、販売期限が3分の2の時点とされています。[4]納品期限を緩和した(予定を含む)食品小売事業者は、令和7年10月時点で377事業者です(令和6年10月時点は339事業者)。[1]

納品期限の条件が違うため、同じロットが3分の1の取引先にはもう出せず、2分の1の取引先にはまだ出せる状態が起こります。日付逆転を認めるかどうかも、一般的な慣例だけで判断せず、取引先との合意を確認します。

出せない在庫が事前に見えないのは、判定に使う次の情報が未決定、未共有、未記録だからだと考えます。

  • 取引先の条件が営業担当者の記憶や卸からの通知文にとどまり、倉庫に共有されていない。
  • 在庫表が品目と数量だけで、ロットごとの賞味期限が見えない。
  • 輸送日数や納品先センターでの待ち日数を引いた、自社の出荷の最終日が決まっていない。報告書の概要には、卸の物流センターでの滞留で納品期限を超え、返品された製造業者の例があります。[3]
  • 納品先ごとに前回納めた賞味期限の記録がなく、出荷前に日付逆転を判定できない。
  • 期限の早いものから出すルールを全取引先に一律に使い、条件の厳しい取引先に古いロットを出す。工場内の先期限先出しは関連記事で扱います。

同じロットが取引先の条件で出荷できる・できないに分かれる構造

利用可能在庫にある同じロット
  • 3分の1の取引先で、出荷期限日を過ぎている出荷できない(納品期限)
  • 2分の1の取引先で、出荷期限日以前・逆転なし出荷できる
  • 出荷期限日以前でも、前回納めた賞味期限より古い出荷できない(日付逆転)
  • 前回より古いが、取引先が認める逆転の範囲内出荷できる(認められた範囲の逆転)
同じロットでも取引先ごとの出荷期限日と前回納めた賞味期限で可否が分かれるため、出荷の可否はロットと取引先の組み合わせで判定します。

ロットと取引先の組み合わせで出荷期限を計算する

まず、ロットと取引先の組ごとに納品期限日を計算します。式は、納品期限日=製造日+賞味期間×比率です。比率は3分の1ルールなら1/3、2分の1の取引先なら1/2です。製造日を0日目とした目安です。

  • 賞味期間90日なら、3分の1で30日目、2分の1で45日目、3分の1ルールの販売期限は60日目です。
  • 賞味期間180日なら、同じ順に60日目、90日目、120日目です。
  • 賞味期間360日なら、同じ順に120日目、180日目、240日目です。

賞味期限しか分からない在庫は、賞味期限から賞味期間の3分の2(2分の1の取引先なら2分の1)を引けば同じ日になります。起算日や端数の扱いは公的な定めが確認できず、取引先ごとに確かめます。

次に、納品期限日から輸送日数と納品先センターでの待ち日数を引き、自社の出荷期限日とします。例えば、賞味期間90日、3分の1、輸送2日、待ち3日なら、出荷期限は25日目です。ロットを取引先に出せるのは、次の3つをすべて満たすときです。

  1. 出荷予定日が、その取引先の出荷期限日以前である。
  2. ロットの賞味期限が、納品先に前回納めた賞味期限と同じか新しい(一定範囲の逆転を認める取引先では、その範囲内)。
  3. ロットが利用可能在庫に含まれる(品質保留や引当済みでない)。

取引先別の出荷可能在庫は、条件を満たすロットの合計です。同じロットが複数の取引先で対象になるため、取引先別の数を足すと二重に数えます。全体の量は利用可能在庫で見てください。引当では、条件の厳しい取引先に新しいロットを先に割り当て、古いロットは条件の緩い取引先に回すことを勧めます。

利用可能在庫と引当の詳しいルールは関連記事で扱います。

表03.02-1賞味期間ごとの納品期限と販売期限

賞味期間納品期限(3分の1)納品期限(2分の1)販売期限(3分の1ルール)
90日30日目45日目60日目
180日60日目90日目120日目
360日120日目180日目240日目
製造日を0日目とした目安で、起算日と端数処理は取引先ごとに確認が必要です(農林水産省の資料をもとに作成)。

返品と欠品の損失、期限が迫る在庫の行き先

条件が社内で見えないと、損失は出荷の後で表に出ます。報告書の概要によると、商慣行に従って取引している回答者の半数程度が、商慣行を理由に納品させてもらえない、返品されるといった行為を受けていました。損失を負担したことがない回答者は20%前後で、損失の内訳では物流費が特に大きかったとされます。[3]

欠品にもつながります。新しいロットを条件の緩い取引先に先に出すと、条件の厳しい取引先に回せるロットがなくなります。在庫表の数量は足りていても、出せる在庫が足りない状態です。

期限が迫る在庫は、時間がたつほど選べる手が減ります。次の順に検討することを勧めます。

  1. 納品期限の緩い取引先に振り向ける。
  2. 取引先に事前に相談する。報告書には、事前に事情を説明すれば数日の遅れなら納品できる場合があるという声があります。[2]農林水産省のガイドラインには、日付逆転品を事前の連絡で受け入れてもらえる例もあります。[5]
  3. 別の販路や社員向けの販売に回す。業界の検討会では、期限が迫った自社商品を社員向けに販売しているという卸の発言がありました。[6]
  4. フードバンクなどに寄附する。農林水産省は、期限内の食品の寄附が食品ロスの削減につながるとしています。[1]同じ検討会では、賞味期限切れの商品はフードバンクにも寄贈できないという発言もありました。[6]

どの手も、期限内に判断しなければ使えません。気付いたのが期限の直前なら、廃棄しか残らないこともあります。

主要な取引先の条件一覧と期限の近いロット表を作る

最初の行動は、主要な取引先の納品条件を1枚の一覧にすることです。全取引先を一度に集める必要はありません。売上の大きい取引先か、納品を断られたり返品されたりした取引先から始めることを勧めます。一覧には次の項目を入れます。

  • 取引先名、納品先(物流センター単位)、対象品目
  • 納品期限の決め方(3分の1、2分の1、固定日数など)と、起算日、端数、年月表示の商品の数え方
  • 日付逆転を認めるかどうかと、認める場合の範囲
  • 納品先ごとに前回納めた賞味期限
  • 輸送日数と納品先センターでの待ち日数の見込み
  • 条件の出典(通知文や商談記録)と確認日、期限超過の見込みを相談する窓口

更新の責任者は、条件を最初に知る営業に置きます。条件変更の通知や返品があったときに見直します。倉庫は一覧とロット別の在庫を照合し、出荷期限が近いロット(最も条件の緩い取引先の出荷期限まで一定日数以内のもの)を週1回などの頻度で洗い出します。その表に、誰がいつまでに行き先を決めるかを書き込みます。

農林水産省の適正取引推進ガイドライン(令和8年1月改定)は、商品ごとの納品期限や日付逆転品の納品の可否などを、製造業者と小売業者が十分に協議することを望ましい取引慣行に挙げています。[5]社内の一覧は、その協議で条件を確かめる材料にもなると考えます。

取引先別の条件一覧と期限の近いロット表を作る手順

  • 売上の大きい取引先か、納品を断られた・返品された取引先から対象を選んだ
  • 取引先名、納品先(物流センター単位)、対象品目を一覧に書いた
  • 納品期限の決め方(3分の1、2分の1、固定日数など)と、起算日、端数、年月表示の商品の数え方を取引先に確かめた
  • 日付逆転を認めるかどうかと、認める場合の範囲を書いた
  • 納品先ごとに前回納めた賞味期限を記録した
  • 納品期限日から輸送日数と納品先センターでの待ち日数を引き、ロットごとの出荷期限日を出した
  • 条件の出典(通知文や商談記録)、確認日、相談窓口を書き、更新の責任者を営業に置いた
  • 倉庫が週1回などの頻度で出荷期限の近いロットを洗い出し、行き先を決める人と期日を書き込んだ
条件を最初に知る営業が一覧を更新し、倉庫が一覧とロット別の在庫を定期的に照合して、期限が近いロットの行き先を期限内に決めます。

まとめ

賞味期限内の在庫が出荷できないのは、取引先ごとの納品期限と日付逆転の条件が、在庫の判定に入っていないためです。判断の軸は、ロットと取引先の組み合わせです。納品期限日から輸送と待ちの日数を引いた出荷期限と、前回納めた賞味期限で、出せるかどうかを決めます。最初の行動は、主要な取引先の条件を一覧にし、出荷期限が近いロットを洗い出すことです。条件の整理や引当への反映の進め方を検討する際は、資料や無料相談を活用してください。

よくある質問

3分の1ルールは法律で決まっているのですか?

法律では決まっていません。農林水産省は、取引の中の慣例と説明しています。比率や日数の数え方は取引先によって違うため、条件は取引先ごとに確認してください。

賞味期限しか分からない在庫でも、納品期限を計算できますか?

計算できます。3分の1ルールなら、賞味期限から賞味期間の3分の2を引いた日が納品期限の目安です。2分の1の取引先なら、賞味期間の2分の1を引きます。品目ごとに賞味期間の日数を持っておく必要があります。

日付逆転は、何日古いと納品できないのですか?

公正取引委員会の報告書の定義では、既に納品した商品より1日でも古いと日付逆転品になります。一定範囲の逆転を認める取引先もあるため、範囲を取引先ごとに確かめ、条件一覧に書いておきます。

取引先別の出荷可能在庫を足すと、在庫の総数より多くなるのはなぜですか?

同じロットが複数の取引先の条件を満たすためです。取引先別の数は、その取引先に出せる上限として使い、全体の量は利用可能在庫で見ます。

納品期限を過ぎそうな在庫は、いつ判断すればよいですか?

最も条件の緩い取引先の出荷期限より前に判断します。振り向け、事前の相談、別の販路、寄附のどれも期限内でなければ使えないため、洗い出しの頻度と判断する担当者を先に決めておきます。

自社の課題を具体的に整理する

在庫情報だけでは見通せない不足に備える 需給判断業務改善ガイド取引先別の納品条件と出荷可能在庫の管理を無料で相談する
  1. 農林水産省「商慣習検討」 (確認日: 2026/09/29)
  2. 公正取引委員会「フードサプライチェーンにおける商慣行に関する実態調査報告書」 (確認日: 2026/09/29)
  3. 公正取引委員会「フードサプライチェーンにおける商慣行に関する実態調査報告書(概要)」 (確認日: 2026/09/29)
  4. 農林水産省「食品小売店における納入・販売期限の設定事例について(食品小売業界からの聞き取り)」 (確認日: 2026/09/29)
  5. 農林水産省「「食品製造業者・小売業者間における適正取引推進ガイドライン」新旧対照表(令和8年1月改定)」 (確認日: 2026/09/29)
  6. 公益財団法人流通経済研究所「令和7年度 食品ロス削減のための商慣習検討ワーキングチーム 加工食品の商慣習に関する検討会 第2回 議事要旨」 (確認日: 2026/09/29)