発注点と安全在庫の決め方と、見直しを続けるための運用ルール

発注点と安全在庫を、過去の使用実績とリードタイムから求める手順を計算例で示します。発注残を含めた有効在庫で判定する理由、定量発注と定期発注の使い分け、見直しのきっかけと担当、設定値台帳と例外発注の記録まで、担当者が替わっても判断が揃う運用を解説します。

この記事でわかること

  • 過去の使用実績とリードタイムから発注点と安全在庫を求める手順と計算例
  • 発注点の判定に、発注残を足した有効在庫を使う理由
  • 見直しのきっかけ・担当・頻度の決め方と、設定値台帳・例外発注の記録の残し方

昔決めた発注点と担当者の経験で回る発注

発注点は、在庫がその量まで減ったら発注する基準の数です。安全在庫は、使用量の上振れや入荷の遅れに備えて持つ分で、発注点の中に含まれます。どちらも式は広く知られています。ただ、自社の設定値が数年前に決めたままだったり、担当者が経験で上乗せしていたりしないでしょうか。

こうした運用は、担当者の休暇や異動、仕入先のリードタイム変更をきっかけに崩れます。二重発注を調べる際は、誰がいつ手配したかを確認します。急ぎの電話発注や分割納入、担当者の交代では、発注済みか、どれだけ入荷待ちかを引き継ぐ必要があります。

欠品や余剰が出たときは、発注の記録と使用量の実績を並べて、安全在庫が足りていたかを確かめます。

計算式を知っていても、判定に使う在庫の数と、値を直す人と時期が決まっていなければ、判断は担当者ごとに分かれます。この記事では、計算の手順に加えて、判定の仕方と見直しのルールを決める方法を扱います。

手持在庫だけの判定と見直されない設定値

一つ目の原因は、発注点を手持在庫だけと比べていることです。発注済みで入荷前の数量(発注残)が判定に入らないため、入荷を待つ間に同じ品目をもう一度発注してしまいます。在庫が0でも、必要な日までに十分な数量が入荷する予定なら追加発注は不要です。発注残の数量だけでなく納期回答も照合します。

そこで、発注点と比べる在庫は有効在庫にします。有効在庫は、利用可能在庫+発注残−まだ引き当てていない出庫予定で求めます。利用可能在庫は、実在庫から引当済み、品質保留や検査待ち、不良などを除いた数です。引当済みの分はここで差し引いているので、出庫予定には未引当の分だけを入れます。

日付ごとの推移で欠品の時期を見る方法は、別の記事で扱います。

二つ目は、設定値が見直されないことです。仕入先の変更でリードタイムが延びても、その連絡が発注点の担当者に届く経路がなければ、古い値が残ります。根拠と更新日の記録がなければ、後任者は値を変えてよいか判断できません。発注点を決めた後も、誰がいつ在庫を確認し、発注を承認するかが未定なら補充にはつながりません。

古い設定値が欠品と過剰に分かれる条件

発注点・安全在庫が古いまま
  • リードタイムが延びた欠品:入荷前に安全在庫を使い切る
  • 使用量が増えた欠品:発注点が使用のペースに合わない
  • 設計変更や受注の減少で使用量が減った過剰:使わない在庫が積み上がり滞留在庫に
欠品は生産や出荷が止まるためすぐ気づかれるが、過剰は表に出にくく、下げる方向の見直しほど遅れやすい。

使用実績から求める発注点と補充方式の使い分け

計算の前に、使用量とリードタイムの単位を揃えます。稼働日と暦日のどちらで数えるかを決め、月1回まとめて出庫する品目なら、リードタイムも月に換算します。次の順に求めます。

  1. 1日平均使用量=直近の一定期間の使用量÷同じ期間の稼働日数
  2. リードタイム中の使用量=1日平均使用量×リードタイム
  3. 安全在庫=1日平均使用量×備える日数
  4. 発注点=リードタイム中の使用量+安全在庫

備える日数は、リードタイムの実績の遅れ幅と使用量の上振れを見て決めます。安全係数と使用量の標準偏差を使う計算方法もあります。ただし、使用量の分布や日ごとの関係、調達日数の変動をどう仮定するかによって、適用できる式は変わります。

一定量を補充する定量発注と、一定間隔で必要量を見直す定期発注も比べます。使用量の安定性、発注の手間、まとめ買いの条件から選びましょう。定期発注では、発注間隔とリードタイムを合わせた期間の使用量に安全在庫を足して目標在庫とし、そこから有効在庫を引いた量を発注します。

計算例(有効在庫で判定する場合。数値は説明用の仮定)

直近3か月の使用量が1,800個、稼働日が60日なら、1日平均使用量は30個です。リードタイム10稼働日、備える日数5日とすると、安全在庫は150個、発注点は30×10+150=450個です。引当や保留のない利用可能在庫が400個、発注残が300個、未引当の出庫予定がない場合、手元の400個だけで見ると発注点を下回るので発注してしまいます。有効在庫は400+300−0=700個で、発注は不要です。

表02.01-1発注点の計算例と有効在庫での判定(数値は説明用の仮定)

項目計算結果
1日平均使用量直近3か月の使用量1,800個÷稼働日60日30個
安全在庫30個×備える日数5日150個
発注点30個×リードタイム10稼働日+150個450個
手持在庫だけで判定利用可能在庫400個<発注点450個発注してしまう
有効在庫で判定400個+発注残300個−未引当の出庫予定0個=700個発注点を上回り発注不要
15日に延びても発注点450個のまま入荷までの使用量30個×15日=450個安全在庫150個を入荷前に使い切る
リードタイム15日で更新30個×15日+150個発注点600個
同じ在庫でも発注残を足した有効在庫で判定すれば二重発注を避けられ、リードタイムが延びたら発注点の更新が必要になる。

設定値を放置したときに起きる欠品と過剰

設定値を見直さないと、欠品と過剰の両方が起きます。先の例で、仕入先の事情でリードタイムが15日に延びたのに、発注点を450個のまま使うとします。発注から入荷までの15日間で使う量は30×15=450個です。安全在庫の150個は入荷までに使い切り、遅れや上振れが少しでもあれば欠品します。

更新後の発注点は30×15+150=600個です。

逆に、設計変更や受注の減少で使用量が下がったのに発注点を高いまま残すと、使わない在庫が積み上がり、やがて滞留在庫になります。欠品は生産や出荷が止まるのですぐに気づかれますが、過剰は在庫表を見比べる人がいなければ表に出ません。そのため、発注点を下げる方向の見直しほど遅れやすいと考えます。

担当者の裁量も増えます。発注点を信用できなくなった担当者は、発注点より前に発注したり、量を上乗せしたりします。この例外発注が記録されなければ、設定値が合っていないことに誰も気づけず、見直しは始まりません。後任者は、記録に残らない上乗せの習慣を引き継げないまま、発注点だけを頼りに発注することになります。

見直しの条件と担当を決めて台帳に残す

まず、欠品や過剰が多い品目の発注点、安全在庫、リードタイムの設定値と最終更新日を確かめます。欠品や余剰が続く品目、納期や生産計画が変わった品目から見直します。帳簿と実在庫が違う場合は、まず記録のずれを解消してから設定値を評価してください。しきい値は自社で決めます。以下は自社で設定する際の例であり、出典のある目安ではありません。

  • リードタイムは、変更の通知を受けたときか、直近3回の実績の平均が設定値より2日以上長いときに見直す。
  • 使用量は、1日平均使用量が設定時から20%以上変わったときに見直す。
  • 欠品は、1件ごとに、使用量、リードタイム、安全在庫のどれが想定を超えたかを記録して見直す。
  • 過剰は、在庫が発注点の2倍を超える状態が1か月続いたときに見直す。

品目ごとに担当者と承認者を置きます。承認者には、値を上げる判断と下げる判断の両方を任せます。条件が起きたら臨時で、それ以外は品目区分に応じて定期に(例えばA区分は月次、C区分は半期から年1回)見直します。

設定値台帳には、発注方式、1日平均使用量と算出期間、リードタイムの約束値と実績値、備える日数、発注点、最終更新日、更新者、承認者を残します。例外発注は、日付、品目、数量、発注先、納期、理由、承認者を記録し、次の見直しで設定値を直すかを判断します。

見直しの条件と担当を台帳に残す実行チェックリスト

  • 欠品や過剰が多い品目の発注点、安全在庫、リードタイムの設定値と最終更新日を確かめた
  • 発注点と比べる在庫を、利用可能在庫+発注残−未引当の出庫予定(有効在庫)にした
  • リードタイム、使用量、欠品、過剰ごとに、見直しを始めるしきい値を自社で決めた
  • 仕入先からのリードタイム変更の連絡が、設定値の担当者に届く経路を決めた
  • 品目ごとに担当者と、値を上げる判断と下げる判断の両方を持つ承認者を置いた
  • 条件が起きたときの臨時の見直しと、品目区分に応じた定期の見直しの頻度を決めた
  • 設定値台帳に発注方式、1日平均使用量と算出期間、リードタイムの約束値と実績値、備える日数、発注点、最終更新日、更新者、承認者を残した
  • 例外発注の日付、品目、数量、発注先、納期、理由、承認者を記録し、次の見直しで設定値を直すかを判断する手順を決めた
しきい値は自社で決め、本文の2日・20%・2倍・1か月は出典のある目安ではなく設定例として扱う。

まとめ

発注点は、1日平均使用量×リードタイム+安全在庫で求め、安全在庫はまず使用量の日数分で置けます。判定には、利用可能在庫に発注残を足し、未引当の出庫予定を引いた有効在庫を使います。設定値が古くなると欠品と過剰の両方が起きるので、見直しのきっかけ、担当、頻度を決め、設定値台帳と例外発注の記録を残します。最初の行動は、欠品や過剰が多い品目の設定値と最終更新日を確かめることです。

よくある質問

発注点と安全在庫は何が違いますか?

発注点は発注するタイミングを決める基準の量で、安全在庫は使用量の上振れや入荷の遅れに備えて持つ量です。発注点はリードタイム中の使用量に安全在庫を足して求めるので、安全在庫は発注点の一部です。

安全在庫は統計の計算をしないと決められませんか?

1日平均使用量に備える日数を掛ける方法から始められます。欠品と過剰の記録を見て日数を調整します。統計的な式は、需要のばらつき方やリードタイムの安定といった前提を確かめてから使います。

月に1回まとめて出庫する品目は、どう計算すればよいですか?

使用量とリードタイムの単位を揃えます。月単位で使うなら、45日のリードタイムは約1.5か月として計算します。発注も月1回にまとめられる品目なら、定期発注の方が扱いやすいと考えます。

仕入先からリードタイム変更の連絡を受けたら、何を直せばよいですか?

リードタイム中の使用量と発注点を計算し直します。遅れのばらつきが大きくなったなら、備える日数も見直します。連絡を受けた人が設定値の担当者に伝える経路を、先に決めておきます。

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