欠品と過剰在庫を同時に減らす在庫適正化の進め方と運用ルール

欠品と過剰在庫が同時に起きる製造業の在庫を、品目ごとの持ち方のルールで整える進め方です。目的別の在庫の考え方、ABC分析による管理の強弱、補充方式の選び方、在庫回転日数などの指標、見直しの担当と頻度の決め方を順に解説します。

この記事でわかること

  • 欠品と過剰在庫が同時に起きる構造と、在庫を目的別に分けて考える方法
  • ABC分析と欠品の影響で品目を分け、区分ごとに補充方式と見直し頻度を変える方法
  • 在庫回転日数、欠品件数、滞留在庫の見方と、数字の確認から始める見直し体制の作り方

在庫金額は多いのに欠品が起きる状態

在庫金額は多いのに、必要な部品が足りずに生産が止まる。この状態は、在庫の総量を増やしても減らしても解消しません。例えば、出荷の少ない品目を多く抱えていても、よく使う品目の補充が遅れれば欠品します。総量を減らすだけでは解決しないため、品目ごとの使われ方と補充の条件を比べる必要があります。

適正在庫は、品目ごとに、欠品を起こさずに持つ必要がある最小限の量と考えます。中身は目的で分けます。主な目的は二つです。一つは、補充してから次の補充までに使う分で、補充のたびに増減を繰り返すサイクル在庫です。もう一つは、使用量の上振れや納入の遅れに備える安全在庫です。

どちらにも当てはまらず、ほかの目的も説明できない分が、必要量を超えて持っている過剰在庫です。

品目によって、この二つの必要量は違います。ここからは、品目ごとに持ち方のルールを決め、そのルールを誰がいつ見直すかまでを順に整理します。

欠品と過剰が同時に起きる4つの構造

欠品と過剰が同時に起きるのは、品目ごとの持ち方が決まっていないか、決めた値が見直されていないためと考えます。起きやすい構造として、次の4つを挙げます。

  • 全品目に同じ基準を当てはめている。同じ安全在庫日数や同じ削減率では、欠品すると生産が止まる品目が足りなくなり、めったに使わない品目は余ります。
  • 設定値に根拠と更新日が残っていない。リードタイムや使用量が変わっても、誰がいつ直すかが決まっていないので、古い値のまま発注が続きます。
  • 発注済みで未入荷の数量(発注残)が共有されていない。入荷待ちの数量が分からないまま追加を手配すると、同じ不足に対して二重に発注するおそれがあります。
  • 複数の製品で同じ材料を使っている。一方の製品を予定より多く作ると、他方に回す材料が不足します。製品ごとの在庫目標だけでなく、共用材料をどちらへ割り当てるかも決めます。

このほか、在庫の数字そのものがずれていれば、どのルールも正しく働きません。帳簿と現物の差や引当の漏れの切り分けは、別の記事で扱います。

欠品と過剰在庫が同時に起きる4つの構造

  • 全品目に同じ基準生産が止まる品目が足りず、めったに使わない品目が余る
  • 根拠と更新日のない設定値条件が変わっても古い値のまま発注が続く
  • 共有されない発注残入荷待ちの品目を二重に発注する
  • 複数製品で使う共通材料一方の製品の作りすぎで別製品の材料が不足
欠品と過剰在庫が同時に起きる
4つの構造はどれも在庫の総量ではなく品目ごとの持ち方と見直しの問題で、総量を一律に増減しても解消しない。

品目区分で変える補充方式と見直しの頻度

品目の区分は、年間使用金額の多い順に並べるABC分析から始めます。金額の大きい少数の品目に手間をかけ、金額の小さい多数の品目は簡単な運用で済ませる考え方です。区分の境目は、自社の金額の分布を見て決めます。

金額だけで分けると、安くても欠品すれば生産が止まる部品や、リードタイムの長い輸入部品が軽く扱われます。こうした品目と共通部品は、区分を一段上げることを勧めます。区分ごとの持ち方について、編集部が考える例は次のとおりです。

  • A区分(主要原材料、高額部品)は定期発注にし、発注のたびに在庫と発注残を確かめて量を決めます。月次で見直し、購買責任者が承認します。
  • B区分(汎用部品)は発注点方式にし、四半期ごとに購買担当が見直します。
  • C区分(消耗品、副資材)は2箱運用などの簡単な方法にし、半期から年1回、現場リーダーが見直します。
  • 欠品の影響が大きい品目と長納期品は安全在庫を明示し、月次とリードタイムの変更時に生産管理と購買で見直します。
  • 客先指定の受注生産専用品は、原則として在庫を持たず、受注後に手配します。

補充方式は、金額の大きさ、使用量の安定度、欠品したときの影響、仕入先の条件(リードタイム、最小発注単位)を軸に選びます。発注点と安全在庫の計算は、別の記事で扱います。

表02.00-1品目区分ごとの補充方式と見直しの頻度(編集部の例)

区分対象の例補充方式見直しの頻度担当
A区分主要原材料、高額部品定期発注(毎回、在庫と発注残を確認して量を決定)月次購買責任者が承認
B区分汎用部品発注点方式四半期ごと購買担当
C区分消耗品、副資材2箱運用などの簡単な方法半期から年1回現場リーダー
欠品の影響が大きい品目、長納期品(区分を一段上げる)欠品すると生産が止まる部品、輸入部品、共通部品安全在庫を明示した発注点方式または定期発注月次とリードタイムの変更時生産管理と購買
受注生産専用品客先指定品原則、在庫を持たず受注後に手配案件ごと案件担当
区分の境目、頻度、担当は自社の金額の分布と体制で決めるもので、表は編集部が考える一例である。

放置したときの影響と在庫の状態を測る指標

ルールがないまま在庫が積み上がると、影響はまず資金に出ます。中小機構のJ-Net21は、過剰在庫の影響として、資金繰りの悪化と借入金の増加、保管や運搬の経費の増加、工場内の問題が見えにくくなることを挙げています。[1] かといって一律に減らせば、欠品で納期を守れなくなるおそれがあります。

そこで、次の3つの指標を品目区分別に並べて見ることを勧めます。

  • 在庫回転日数は、在庫金額を1日あたりの売上原価(または売上高)で割って求めます。どちらを使うか、期末在庫か期中平均かは社内で一つに決めます。
  • 欠品件数は、出荷の遅れを含めるか生産停止だけかを決めて、月次で数えます。
  • 滞留在庫は、最終出庫日からの経過日数で判定します。何日で滞留とみなすかは自社で決めます。

外部の数字と比べるときは前提に注意します。財務省の財務総合政策研究所の資料では、2024年度の製造業(全規模)の棚卸資産回転期間は1.64か月です。[2] これは売上高を基準にした全規模の平均値で、個社の目安にはなりません。回転日数だけを目標にすると、欠品しやすい品目まで減らすおそれがあると考えます。

欠品件数と同じ表で追ってください。

品目一覧を並べて区分とルールの担当を決める

最初に、在庫金額の大きい品目と欠品の多い品目を1枚の一覧に並べます。次の順で進めることを勧めます。

  1. 帳簿と現物の差と、発注残の一覧を確かめます。J-Net21のQ&Aも、在庫の置き場所をはっきりさせ、入出荷を記録する仕組みを作ることから始めるよう勧めています。[3]
  2. 品目ごとに、年間使用金額、直近の欠品回数、リードタイム、最小発注単位、最終出庫日、現在の設定値と最終更新日を並べます。
  3. 金額でABCに分け、欠品の影響と長納期で区分を補正します。
  4. 区分ごとに、補充方式、見直しの頻度ときっかけ、担当と承認者、例外発注の記録方法を1枚の表にまとめます。
  5. 区分別の3つの指標を月次で確かめ、ルールを直します。

ルールは文書にしただけでは続きません。担当者が変わった際は、実際の記録を使って判断を引き継げるかを確認します。J-Net21は、在庫削減は一部署ではうまくいかず、経営者が先頭に立って全社で取り組む必要があるとしています。[1] 月次の確認には、経営者か工場長が加わることを勧めます。

一覧をExcelで回し続けるかどうかの判断は、別の記事で扱います。

品目区分とルールの担当を決める実行チェックリスト

  • 帳簿と現物の差と、発注残の一覧を確かめた
  • 在庫金額の大きい品目と欠品の多い品目を1枚の一覧に並べた
  • 一覧に年間使用金額、直近の欠品回数、リードタイム、最小発注単位、最終出庫日、現在の設定値と最終更新日を入れた
  • 年間使用金額でABCに分け、欠品の影響が大きい品目と長納期品の区分を上げた
  • 区分ごとに補充方式、見直しの頻度ときっかけ、担当と承認者、例外発注の記録方法を1枚の表にまとめた
  • 在庫回転日数の計算基準(売上原価か売上高か、期末在庫か期中平均か)と欠品件数の数え方を決めた
  • 区分別の在庫回転日数、欠品件数、滞留在庫を見る月次の確認の場を設け、経営者か工場長の参加を決めた
在庫の数字が合っていることを確かめてから区分とルールを決め、月次の確認の場で直し続けるまでを一つの流れとして進める。

まとめ

欠品と過剰在庫が同時に起きるのは、品目ごとの持ち方のルールが決まっていないか、決めた値が見直されていないためです。年間使用金額で品目を分け、欠品の影響と供給条件で補正し、区分ごとに補充方式、見直しの頻度、担当を決めます。在庫回転日数と一緒に欠品件数と滞留在庫を見ると、減らしすぎに気づけます。最初の行動は、在庫の数字が合っているかを確かめ、金額の大きい品目と欠品の多い品目を1枚に並べることです。

よくある質問

適正在庫は何か月分が目安ですか?

自社にそのまま使える一律の目安はありません。製造業全体の平均として、2024年度の棚卸資産回転期間1.64か月という値はありますが、品目構成や生産方式で大きく変わります。品目区分ごとに現状値を測り、そこからの改善幅で目標を置くことを勧めます。

すべての品目に発注点や安全在庫を設定する必要がありますか?

必要ありません。金額の小さいC区分は、2箱運用などの簡単な方法で足ります。手間は、金額の大きい品目と欠品の影響が大きい品目にかけます。

ABC分析の区分の境目はどう決めればよいですか?

年間使用金額の多い順に並べ、累計金額の分布を見て自社で決めます。金額が小さくても、欠品すると生産が止まる品目や長納期品は区分を上げます。

在庫回転日数は売上原価と売上高のどちらで計算しますか?

どちらでも計算できますが、社内で一つに決め、期末在庫か期中平均かも揃えます。外部の統計と比べるときは、その統計の基準に合わせてください。財務省の資料の棚卸資産回転期間は売上高を基準にしています。

見直しは誰がどの頻度で行えばよいですか?

区分ごとに担当と承認者を決めます。例としてA区分は月次、C区分は半期から年1回とし、リードタイムの変更や欠品が起きたときは臨時で見直します。

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  2. 財務省 財務総合政策研究所「財務指標の例⑭ 棚卸資産回転期間」 (確認日: 2026/09/29)
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