製造業で滞留在庫が生まれる原因と、見つけて減らす判断ルール

製造業の滞留在庫は、最小発注単位のまとめ買い、設計変更や終売、内示の変更、発注点の見直し漏れ、品質保留の放置から生まれます。最終出庫日からの経過日数と金額で一覧にする方法と、転用や廃棄を誰が決めるかを解説します。

この記事でわかること

  • 製造業で滞留在庫が生まれる5つの入口と、入口ごとに決めておく対策
  • 最終出庫日からの経過日数と金額で滞留を区分し、一覧にする方法
  • 転用、返品、値引き販売、廃棄の選択肢と、金額に応じた判断者の決め方

棚卸のたびに持ち越される動かない在庫

倉庫の奥に、何年も出庫のない部品や、終売した製品の資材が積まれていませんか。棚卸のたびに話題になっても、まだ使うかもしれないという理由で持ち越されます。製造業の滞留在庫は、こうして保管場所と資金を少しずつ圧迫します。棚が埋まれば、新しく入る資材の置き場探しにも時間を取られます。

中小機構のJ-Net21にも、3年前に作った製品の資材が大量に残り、保管場所がなくなってきたという相談が寄せられています。[1]

持ち越しが続く理由の一つは、どこからを滞留とみなすかが社内で決まっていないことです。一定期間動きがない在庫でも、将来使う予定が確定しているものと、使い道が決まらないものは分けてください。J-Net21は、期間や残す数量の基準は企業や商品によって異なるとしています。[2]

ここでは、最終出庫日からの経過日数と在庫金額で滞留を区分し、区切りの日数や金額は自社で決める前提で進めます。区切りを先に決めておけば、棚卸のたびに一品ずつ議論し直す必要がなくなります。

滞留在庫が持ち越されていないかの自己診断

  • 何年も出庫のない部品や、終売した製品の資材が倉庫に残っている
  • 棚卸のたびに「まだ使うかもしれない」という理由で持ち越す品目がある
  • 何日出庫がなければ滞留とみなすか、社内で決まっていない
  • 品目ごとの最終出庫日を、すぐに一覧で出せない
  • 棚が埋まり、新しく入る資材の置き場探しに時間を取られている
  • 転用や廃棄を誰が決めるか、金額による区切りが決まっていない
  • 滞留した在庫が、どの入口から生まれたかを記録していない
  • 判定の期限と判定者が決まらないまま、品質保留の棚に残る在庫がある
当てはまる項目は、処分を決める前に滞留の基準、判断者、発生原因の記録を決める必要があるというサインとなる。

滞留在庫が生まれる製造業の5つの入口

製造業の滞留在庫は、在庫が生まれた時点で、余る数量、使い道、判定の期限が記録されないことから増えると考えます。主な入口は次の5つです。

  • 最小発注単位でのまとめ買い。J-Net21は、長く残った資材について、リピートに備えて残した顧客専用の資材か、発注数の誤りや最低発注単位の制約で残ったものではないかと見立てています。[1]
  • 設計変更や製品の終売。NIST MEP(米国の製造業支援事業)が公開した施術台メーカーの事例では、生産と在庫を追う仕組みがなく、終売した製品向けの、使われなくなった部品やめったに注文のない部品を過剰に抱えていました。[3]
  • 顧客の内示の変更。内示に合わせて手配した部材が、確定注文との差の分だけ残ります。
  • 発注点や安全在庫の見直し漏れ。使用量が減った後も、以前の水準で補充が続きます。
  • 品質保留のまま放置。判定の期限と判定者が決まらず、保留の棚に残り続けます。

内示の変更と品質保留の放置は、公開事例では確認できなかったため、編集部の考察として挙げています。どの入口でも、発生時に原因を記録していなければ、処分しても同じ入口から滞留が再び生まれます。発注点の計算と、保留などの在庫状態の管理は、関連記事で扱います。

滞留在庫が生まれる製造業の5つの入口

  • 最小発注単位でのまとめ買い余る数量と使い道が記録されないまま残る
  • 設計変更や製品の終売旧部品や終売品向けの部品が使われなくなる
  • 顧客の内示の変更確定注文との差の分だけ部材が残る
  • 発注点や安全在庫の見直し漏れ使用量が減った後も以前の水準で補充が続く
  • 品質保留のまま放置判定の期限と判定者がなく保留の棚に残る
滞留在庫
どの入口も、在庫が生まれた時点で余る数量、使い道、判定の期限を記録しないことが共通点で、記録がなければ処分しても同じ入口から滞留が再び生まれる。

経過日数と金額で一覧にし、判断者を決める手順

J-Net21は、棚卸で帳簿と現場、過去の出荷実績を照らし合わせ、一定期間出荷のない品目に印を付けて区別すること、不動化しそうな在庫を1か所に集めることを勧めています。[2] この照合の結果を、次の手順で一覧にします。

  1. 品目ごとに、区分、保管場所、数量、金額、最終出庫日、経過日数、発生原因、使用予定、判断者、判断期限の列を作ります。
  2. 経過日数は、基準日から最終出庫日を引いて出します。基準日が9月30日、最終出庫日が3月31日なら183日です。
  3. 経過日数と金額の区切りは、品目区分、調達リードタイム、使用頻度、補修用に持つ義務の有無を踏まえて自社で決めます。
  4. 金額の大きい順に着手し、発生原因を5つの入口に分け、生産計画や発注残に使う予定がないかを確かめます。
  5. 社内での転用、仕入先への返品や引き取りの交渉、値引き販売や別の経路での売却、廃棄の順に検討します。

資材を外部に売ると競合製品が生まれるおそれがあり、特定の顧客向けの資材なら信用問題にもなりえます。[1] 売る前に顧客との取り決めを確認してください。判断者は金額で分けることを勧めます。例えば、一定額までは担当部門の責任者、それを超えるものは工場長というように区切ります。

廃棄は損失として利益を押し下げるため、規模や年度の業績によっては経営トップが直接判断すべき場合があるとJ-Net21は述べています。[2]

表02.03-1滞留在庫一覧の主な列と判断での使い方

列書く内容判断での使い方
区分、保管場所、数量、金額品目区分、現物の所在、在庫金額金額の大きい順に着手
最終出庫日、経過日数基準日−最終出庫日(例:9月30日−3月31日=183日)自社で決めた日数と金額の区切りで区分
発生原因5つの入口のどれか入口ごとの対策を担当部門に割り当てる
使用予定生産計画や発注残での使い道予定がなければ転用、返品・引き取り、値引き販売・売却、廃棄の順に検討
判断者金額の区切りで決めた担当(例:一定額まで担当部門の責任者、超えれば工場長)廃棄の規模や年度の業績によっては経営トップが判断
判断期限結論を出す日決算直前までの先送りを防ぐ
経過日数と金額の区切りは品目区分や調達リードタイムを踏まえて自社で決め、金額の大きい品目から転用、返品・引き取り、値引き販売・売却、廃棄の順に検討する。

処分の先送りと、会計・税務との混同で起きること

滞留在庫を持ち続けると、保管場所と倉庫代がかかり続け、在庫に資金が固定されます。J-Net21は、廃棄にかかる費用と、この先も続く倉庫代を比べて判断するよう勧めています。[1]

判断者と金額の基準が決まっていないと、現場は値引きしてでも売りたい、本社は廃棄したいといった意見がまとまらず、結論が決算の直前まで延びやすいと考えます。設計変更で使われなくなった部品は、時間がたつほど転用先を探しにくくなりがちです。処分できても入口の記録がなければ、翌年も同じ品目群が一覧に並びます。

処分の判断と、会計や税務の処理は分けて考えます。法人税基本通達は、税務上の評価損を計上できる著しい陳腐化の例として、売れ残った季節商品を今後通常の価額では売れないことが明らかな場合や、型式や性能などが大きく異なる新製品の発売で通常の方法では売れなくなった場合を挙げています。

破損や品質の変化などで通常の方法では売れなくなった場合も含まれます。一方で、物価の変動や過剰生産で時価が下がっただけでは該当しないとしています。[4] 個別の在庫の扱いは、税理士や会計士に確認してください。

金額上位の一覧づくりと入口ごとの担当決め

最初に、最終出庫日と在庫金額を出せる品目から一覧を作り、金額の上位品目に発生原因、判断者、判断期限を書き込みます。あわせて、入口ごとの対策を担当部門に割り当てます。

  • 購買は、最小発注単位で発注するときに、余る数量と使い道を記録します。
  • 設計と生産管理は、設計変更や終売を決めた時点で旧部品の在庫と発注残を確かめ、切り替えの時期を決めます。
  • 営業と生産管理は、内示で手配した数量と確定注文の差を記録し、差の扱いを顧客と取り決めます。
  • 購買と生産管理は、発注点と安全在庫を見直す周期と担当を決めます。
  • 品質保証は、保留品の判定期限と判定者を決め、期限を過ぎたものを一覧に出します。

J-Net21は回避策として、在庫の責任を負う部門の明確化、生産や仕入の数量を柔軟に見直せる仕組み、棚卸の頻度を上げることを挙げています。[2] 一覧と入口の対策は、月次か四半期の会議で経理も交えて進み具合を確かめることを勧めます。

会議では、一覧から消えた品目の数に加え、新しく一覧に入った品目がどの入口から来たかを見ると、対策が効いているか分かります。

まとめ

製造業の滞留在庫は、まとめ買い、設計変更や終売、内示の変更、発注点の見直し漏れ、品質保留の放置という入口から生まれます。最終出庫日からの経過日数と金額で区分する基準を自社で決め、金額の大きい品目から原因と判断者を書き込んだ一覧を作ってください。転用や廃棄の判断と、会計・税務の確認は分けて進めます。入口ごとの対策を担当部門に割り当て、定例の場で確かめることが、同じ滞留を繰り返さない最初の行動です。

よくある質問

何日動かなければ滞留在庫ですか?

公的な基準は見つかっていません。最終出庫日からの経過日数と金額で区分し、品目区分、調達リードタイム、使用頻度を踏まえて自社で決めます。決めた基準は一覧に書き、全部門で同じものを使ってください。

滞留在庫、不動在庫、デッドストック、過剰在庫はどう違いますか?

資料によって使い方が揺れています。必要量を超えた在庫、一定期間動いていない在庫、使う見込みも売る見込みもなくなった在庫のように、社内で区分を決めて呼び分けることを勧めます。

滞留在庫は評価損として計上できますか?

法人税基本通達は、税務上の評価損を計上できる例として著しい陳腐化や破損などを示し、過剰生産や物価の変動で値下がりしただけでは該当しないとしています。処分の方針を決めたうえで、個別の在庫の扱いを税理士や会計士に確認してください。

補修用の部品や、顧客から預かっている在庫も含めますか?

保有する義務や預かりの取り決めがある在庫は、区分を分けて一覧で管理します。滞留の判定から外す理由を記録しておくと、見直しのたびに議論し直さずに済みます。

食品の期限切れによる廃棄も同じ考え方ですか?

期限のある在庫は、最終出庫日からの経過日数より、期限までの残り日数で管理します。食品製造業の期限の管理は、関連記事で扱います。

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