食品製造業の原材料・半製品・製品の期限管理と在庫の考え方

食品製造業の在庫は、数量が同じでも期限とロットによって、使える量と出荷できる量が変わります。消費期限と賞味期限、開封後や解凍後の期限、半製品の保管期限について起算点と決める人を整理し、期限切れ廃棄と欠品を同時に減らす在庫の数え方を解説します。

この記事でわかること

  • 原材料、半製品、製品が持つ期限の種類と、起算点や決める人の違い
  • 期限とロットによって、使える在庫と出荷できる在庫が在庫表の数量より減る仕組み
  • 期限切れ廃棄の損失の見方と、最初に作る期限の一覧の手順

数量はあるのに使えない在庫、出せない在庫

食品工場の在庫表に「原材料A 200kg」とあっても、その全量を次の生産に使えるとは限りません。ロットごとに期限が違い、使う日までに期限が切れる分が混じっているかもしれないからです。製品も同じです。賞味期限が残っていても、取引先が決めた納品期限を過ぎた分は、その取引先には出荷できません。

期限切れによる廃棄は、業界全体で見ても小さな量ではありません。農林水産省の推計では、2024年度の事業系食品ロス量237万トンのうち、食品製造業が110万トンを占め、業種別で最も多くなっています。[1]このうち期限切れが原因の量は公表されていません。

それでも、原材料や半製品の期限切れは、工場の中の記録と判断の決め方で減らせる部分だと考えます。

次のどれかに当てはまる場合は、期限が在庫の数に反映されていない可能性があります。

  • 在庫表には数量だけがあり、期限は現物のラベルや別の台帳で確かめている
  • 開封や解凍をした原材料に、その日時が書かれていない
  • 作り置きの半製品に期限がなく、使うかどうかを担当者が経験で決めている
  • 取引先ごとの納品期限を、営業担当者だけが把握している

期限が在庫の数に反映されているかの自己診断

  • 在庫表の品目の数量を、ロットごと・期限ごとの内訳に分けて答えられない
  • 使う日や出荷する日の時点で期限内に残る量を、在庫表だけでは出せない
  • 開封・解凍した原材料の容器を見ても、開封・解凍の日時と社内の期限が分からない
  • 作り置きの半製品に、決めた人と根拠のある保管期限がない
  • 倉庫や生産管理が、出荷前に取引先ごとの納品期限を確かめられない
  • 期限を過ぎた原材料を使うかどうかを、品質保証ではなく現場の担当者が決めている
  • 期限切れ廃棄を、品目・工程・理由・金額で集計していない
1つでも当てはまれば、在庫表の数量に期限切れで使えない分や出荷できない分が含まれている可能性があります。

段階ごとに違う期限の種類と起算点

期限の管理が難しい理由の1つは、期限が1種類ではないことです。消費期限は、定められた方法で保存したときに、安全性を欠くおそれがないと認められる期限です。賞味期限は、同じ条件で期待される品質が十分に保たれると認められる期限で、過ぎても品質が保たれていることがあります。[2]

どちらの表示期限も、開封前の状態で、定められた方法により保存した場合の期限です。[3]開封、解凍、小分けをした原材料や、仕込んだ半製品の期限は、供給元の指示がなければ、社内で決めない限りどこにもありません。表示期限は、原則としてその食品を最もよく知る製造業者などが責任を持って設定するとされています。[4]

社内で使う期限にも、同じように決める人と根拠が必要だと考えます。

もう1つの理由は、期限がロットごとに違うことです。原材料Aの手持ち200kgのうち、ロット1の80kgは3日後、ロット2の120kgは20日後に期限が切れるとします。5日後の生産に使えるのは120kgです。数量をロットに分けずに持つと、この80kgの差が在庫表から見えません。

利用可能在庫からは、引当済みや品質保留の分とあわせて、期限切れで使えない分も差し引きます。引当と保留の差し引き方は、利用可能在庫の計算の記事で扱います。

期限によって使える在庫と出荷できる在庫が減る流れ

  1. 在庫表の数量(例:原材料A 200kg)
  2. 80kg(3日後期限)と120kg(20日後期限)に分けるロットごとの数量と期限
  3. 使う日・出荷日に期限切れのロットを除く(例:80kg)使える在庫(例:5日後の生産に120kg)
  4. 取引先の納品期限を過ぎたロットを除く出荷できる在庫(製品)
在庫表の数量が同じでも、使う日や出荷する日の時点で期限内のロットだけが使える在庫になり、製品は取引先の納品期限でさらに出荷できる量が減ります(原材料Aの数値は本文の説明用の例)。

期限ごとに起算点と記録場所と決める人を一覧にする

期限を在庫の数に反映するには、まず品目の段階ごとに、期限の種類、起算点、記録する場所、決める人を一覧にすることを勧めます。行は次の5つに分けます。

  • 未開封の原材料は、供給元が表示した消費期限か賞味期限を、入荷時にロットごとに記録します。
  • 開封や解凍をした原材料は、その日時から数える社内の期限を持ちます。供給元の指示があれば従い、なければ品質保証が決めます。
  • 半製品は、製造の日時から数える社内の保管期限を持ちます。品質保証が根拠を残して決めます。
  • 製品の表示期限は、表示責任者が科学的・合理的な根拠で設定し、根拠資料を整えて保管します。[3]
  • 出荷する製品には、取引先ごとの納品期限が加わります。営業が取り決めを記録し、倉庫と生産管理から見える場所に置きます。

一覧ができたら、原材料と半製品は使用予定日、製品は出荷予定日の時点で期限内のロットだけを、使える在庫として数えます。いわゆる3分の1ルールなどの納品期限は、法的な位置づけのない商慣習です。[4]それでも取引条件になっていれば、製品を出荷できるかどうかを左右します。

払い出しは、期限の早いロットから使う先期限先出しを基本にします。入荷順と期限順は一致しないことがあり、入荷順に出す先入れ先出しだけでは期限切れを防げないためです。払い出しの細かなルールと納品期限の計算は、それぞれの記事で扱います。

表03.00-1原材料・半製品・製品の期限の種類、起算点、記録場所、決める人

区分期限の種類起算点記録する場所決める人
原材料(未開封)表示期限(消費期限か賞味期限)供給元の表示どおり入荷記録(ロットごと)供給元
原材料(開封・解凍後)社内の期限開封・解凍の日時容器のラベルと記録表供給元の指示に従う。なければ品質保証
半製品社内の保管期限製造の日時製造記録とラベル品質保証(根拠を残す)
製品表示期限(消費期限か賞味期限)製造日製造記録と根拠資料表示責任者(科学的・合理的な根拠で設定)
製品(出荷)取引先ごとの納品期限製造日、または賞味期限から計算倉庫と生産管理から見える取引先別の一覧取引先との取り決め(営業が記録)
自社の品目で同じ表を作り、空欄になった期限から起算点と決める人を決め直します。社内の期限を決める人は、編集部が勧める分担の例です。

期限切れと欠品が同時に起きる仕組みと損失の見方

期限が在庫の数に入っていないと、期限切れと欠品が同時に起こりえます。在庫表の数量に期限切れ予定の分が含まれていれば、足りていると判断して発注や生産を控えます。使う日になって期限切れが見つかると、捨てる在庫と足りない在庫が同時に出ます。

製品では納品期限が加わります。農林水産省は、納品期限までに納品できなかった商品は、賞味期限まで日数が残っていても行き場を失い、廃棄となる可能性があると説明しています。[5]

期限切れの原材料を使うかどうかを、現場の判断に任せることも避けます。消費者庁のガイドラインは、消費期限を過ぎた原材料の使用は厳に慎むべきとしています。

賞味期限を過ぎた原材料の使用は必ずしも禁止されていませんが、社内基準の策定、科学的・合理的な確認、記録の保存など、慎重かつ十分な管理の下で行う必要があるとしています。[3]在庫の上では、期限を過ぎたロットをいったん使える在庫から外します。

賞味期限を過ぎた原材料を例外として扱うかどうかは、品質保証が社内基準に沿って判断し、記録を残す形にしておきます。

損失は、捨てた量だけでは測れません。原材料は購入単価、半製品と製品は製造原価で金額にし、廃棄処理費と、欠品による緊急調達の費用や失った粗利を加えて見ることを勧めます。欠品の損失は推定なので、実績とは分けて記録します。

品目を1つ選び、期限の一覧を作る

最初の一歩は、期限切れが出た品目を1つ選び、その原材料から製品までの期限を一覧にすることです。記録の道具を選ぶのは、何を記録するかが決まってからで間に合うと考えます。

  1. 品質保証、製造、倉庫、購買、営業の担当者が、対象の品目と、使う原材料と半製品を書き出す。
  2. それぞれの期限の種類と起算点を書く。表示期限、開封後や解凍後の期限、半製品の保管期限、納品期限を分ける。
  3. 期限を記録している場所を書き、記録がない期限に印を付ける。
  4. 社内で決める期限に、決める人と根拠資料の有無を書く。
  5. 過去の期限切れ廃棄を品目、工程、理由、金額で集計し、一覧のどの空欄と結びつくかを確かめる。

廃棄と空欄が結びつけば、どの期限から決め直すかの順番が決まります。

期限管理に使える記録は、衛生管理の記録としてすでにあるはずです。令和3年6月から、原則としてすべての食品等事業者に、HACCPに沿った衛生管理が求められています。衛生管理計画の作成と実施状況の記録と保存が必要で、管理の例には原材料の受入時の検査と記録が含まれます。[6]入荷の記録にロットと期限を加えるところから始められます。

まとめ

食品製造業の在庫は、同じ数量でも期限とロットによって、使える量と出荷できる量が変わります。期限は表示期限だけでなく、開封後や解凍後の期限、半製品の保管期限、取引先の納品期限があり、起算点も決める人も違います。判断の軸は、使う日や出荷する日の時点で期限内のロットだけを数えることです。まず期限切れが出た品目を1つ選び、期限の種類、起算点、記録場所、決める人を一覧にしてください。空欄になった箇所から見直しを始めます。

よくある質問

消費期限と賞味期限で、在庫の扱いは変わりますか?

変わります。消費者庁のガイドラインでは、消費期限を過ぎた原材料の使用は厳に慎むべきとされています。賞味期限を過ぎた原材料の使用は必ずしも禁止されていませんが、社内基準の策定、科学的・合理的な確認、記録の保存など、慎重かつ十分な管理の下で行う必要があります。在庫の上では、期限を過ぎたロットをいったん使える在庫から外し、例外は品質保証が判断して記録する運用を勧めます。

開封した原材料は、表示されている期限まで使えますか?

表示期限は開封前の状態が前提なので、そのまま使えるとは限りません。開封後や解凍後の期限は、供給元の指示があれば従い、なければ品質保証が社内基準として決めます。払い出しには、表示期限と開封後の期限のうち早い方を使います。記録の方法は原材料と半製品の期限管理の記事で扱います。

HACCPに対応していれば、期限の管理も足りていますか?

HACCPに沿った衛生管理は、計画の作成と記録の保存を求めています。ただ、在庫の期限とロットをどう数えるかまでを定めたものは、確認した範囲では見当たりませんでした。衛生管理の記録に期限とロットを加え、在庫の数え方とつなげることを勧めます。

自社の課題を具体的に整理する

在庫情報だけでは見通せない不足に備える 需給判断業務改善ガイド原材料から製品までの期限の一覧づくりを無料で相談する
  1. 農林水産省「事業系食品ロス量(2024年度推計値)を公表」 (確認日: 2026/09/29)
  2. 消費者庁「期限表示(消費期限・賞味期限)」 (確認日: 2026/09/29)
  3. 消費者庁 食品表示課「食品期限表示の設定のためのガイドライン」 (確認日: 2026/09/29)
  4. 消費者庁 食品表示課「加工食品の表示に関する共通Q&A(第2集:消費期限又は賞味期限について)」 (確認日: 2026/09/29)
  5. 農林水産省「商慣習検討」 (確認日: 2026/09/29)
  6. 厚生労働省「HACCP(ハサップ)」 (確認日: 2026/09/29)